2つの時の時空日記:改

2つの時のネタバレ有りの設定とか話とか色々。はてなダイアリーからお引越し。

「悪魔と天使の子と天使のような悪魔と悪魔のような悪魔」誕生日記念日企画その4

タイトル長い!!
今回は3月分です!!
あ、前回の記事に2つの時89話が載ってるので、まだ見てない人は見てね!!

さて、3月は4日と15日と28日……
おや、キャラ割合的には常識的な人がギャグ方面で強い人に挟み撃ちにされていますね……これはタイトルからして嫌な予感が。



「悪魔さん、みーつけた!!」
「『悪魔』…………その声は、サラ!」
森の中で、小さな女の子……サラの声を聞いて振り返る若い女性。
「その……悪魔って呼び方はやめてもらえないだろうか……。私にはラトンという名前がある」
若い女性……ラトンはサラが名付ける<呼び名>に困っていた。
ラトンの呼び名である悪魔は、悪いイメージを持つ者が多く、人々に勘違いされやすいからだ。

「でもー……、その黒いの、悪魔のかっこうでしょ?」
「ち、違う……!私はこのマントを気に入っていて、それを身に着けているだけ、だ……。お願いだから、私の思い出の品に言葉の刃を向けるのは……やめてもらえないか……」
「うーん。私は『悪魔』は嫌いじゃないんだけどなあ。それなら、悪魔さんのこと、なんて呼べばいいの?」
「できれば、名前で呼んでもらえるといいのだが……」
「ダメ!それじゃあ面白くないもの!うーんと……」
サラは小さな頭で必死に考え始めた。
ラトンも乗り気はあまり無いが、悪魔に代わる名前があれば困らずに済むので、一緒に考えることにした。
しかし……いい案が思いつかない。
2人が色々と考え、案を出している中、サラの友達が2人のもとへとやってきた。

「サラー!ラトンおねえちゃーん!」
「ちっちゃい天使だー!」
「ラン……!」
赤に近いピンクの髪に、大きな赤いリボン、そして小さな翼……。
サラよりも小さい女の子、ランが笑顔で2人に話しかけてきた。
「えへへー、今日はサラといっしょにあそぶやくそくをしていたんだー。それでラトンおねえちゃんがいたからビックリ!ラトンおねえちゃん、元気?」
「あ、ああ」
「今ね、悪魔さんの新しい呼び方を考えていたの!ちっちゃい天使は何かいい考え、ある?」
「うーんとね……なんでもさん!ラトンおねえちゃんはね、料理におさいほう、戦いの仕方に、色んな話を知ってるんだ!この前、ラトンおねえちゃんにルクッカ王国のむかしばなしをきいたんだー!」
ランの言葉に、ラトンは首をかしげた。
(ん……。待て、私はランにそこまでした覚えが無い……。そういえばランはクームの妹だとか言い張っていたが……私たちがいる歴史とは違う歴史にいる子で、私は違う歴史でランと一緒にいる……のだろうか?)
ラトンの疑問の感情をランはすかさず読み取り、ラトンの方へ向く。
「あ、ごめんねラトンおねえちゃん!ラトンおねえちゃんの記憶にないこと、つい話しちゃった!」
「え、あ、あぁ……。大丈夫だ」
……とは言ったものの、ラトンの中ではとても複雑な感情でいっぱいのままだった。

「なんでもさん!なんでもさんもいいね!それじゃあ、『なんでも悪魔』さんって呼ぼう!」
「……え、悪魔は外さない、のか……!?」
「うーんとね、やっぱり私にとっては悪魔はお気に入りなのよ!だから、入れちゃった!」
「その……サラ。やっぱり、悪魔の方がいい……かなぁ」
「そう?それじゃあこれからもよろしくね、悪魔さん!」
結局、ラトンは悪魔のままで呼ばれることになってしまった。
「そ、それじゃあ私はこの辺りで……」
「まって、悪魔さん!」
「?」
「最近、この森で不思議ーなことが起きているの!悪魔さんと一緒に、その謎を解きたいなーって思ってたんだ!」
「今日の遊びは、なぞとき!でも、わたしたちはまだまだ小さいから、頭がいい人と一緒なら力になるからうれしいな!」
「謎……か。それで、この森でどんな謎が起きているのだ?」
「それはね……不思議な木がいるの!最近じゃあ城下町の皆がこわーい話にして盛り上がっているの!突然木が動いて葉っぱが増えたと思ったら、いきなり葉っぱが燃えて木が黒焦げになって……、その木はオバケの木になって森中を走り回るの!」
「木が……動く?通常なら木に闇の力、あるいは魔力が入った場合動くようになるのだが……、ずいぶんとおかしな変化だな」
「でしょ!!だから、一緒に謎解きしよう!」
「そうだな……、少し興味がある。一緒に行こう」
「やったやった!悪魔さんが一緒になったよ!」
「わーい!ラトンおねえちゃんといっしょー!!」

こうして、ラトンはサラ、ランと一緒に森の木が動き出す謎を解くことになった。
しかし……この広い森の中だ。そう簡単に動く木は見つからない。
気が付けば、日差しは空の真上から注がれていた。
「ずいぶんと暑くなってきたな……ここで一旦、昼ご飯を食べることにしようか」
「おひるー!ラトンおねえちゃんの料理が食べられるー!!」
「悪魔さんの料理、すっごく楽しみ!!」
ラトンは持ち歩いていた調味料と、森の食材と近くの川の水を使って料理を作り始める。
サラとランは、木陰で水を飲みながら一休みを始める。
「あぁ、やっぱりたんけんって楽しいね、サラ!」
「ねー。動く木ってとっても不思議!早くお友達になりたいなー」
「ぎぃぎぎぎぃ……」
「なんだろうねー、今の声」
「不思議な声ー。木をこすり合わせた声みたいー」
「ぎきぎぎぎぎぎぎしぃ……」
「後ろからきこえるねー」
「後ろ……ああっ!」
「ぎぎぎぎぎっ!!!」
「うごくまっくろな木だ!!」
「黒い木さん!お友達にな――」
ズサッ!!
黒い木は自らの枝を振り回し、サラめがけて攻撃した。
「いたたぁ……怒ってるのかなあ?」
「うーん……おこっているんじゃなくて、ただただあばれてるだけみたい。闇の力がもやあーって木の中で流れているの!」
「そっかー暴れちゃってるのかぁ……残念残念……」
「ぎぎぎきぎぃ!!!」
「サラ、ラトンおねえちゃんのところに行こう!ラトンおねえちゃんなら、この木のなぞを解いてもらえるかも!」
「そうだよね、謎解きに来たんだものね!行こう行こう!!」
2人はすぐさま走り出し、ラトンの居場所へと向かっていった。

「ラトンおねえちゃん!この木のなぞといてー!!」
「……!!動く黒い木……。なるほど、魔力が動力源だが、闇の力が加わって暴走してしまっているのか……。サラ、ラン、ここは私が倒すから、下がっていてほしい」
「もしかして黒い木さんは苦しんでいるのかもしれないんだよね……頑張って!」
「うん!ラトンおねえちゃん、がんばってねー!」
「ぎぎぃぎぃぎぃぃぃぃぃ!!!!」
「相手は闇……。ここは一気に光の大技で!」
ラトンは弓を斜め上に構え、魔力の矢を放つ。
「……エクストラ……アロー!!!」

ズドオオオオオオオ!!

ラトンが技名を叫ぶと、空中にある魔力の矢が弾け、光が広がってゆく。
光は一旦誰かの姿を形作ると、光の柱を空から注ぎ込み、黒い木へと直撃させる。
「ぎぃぃぃい……!」
黒い木からは闇の力がたちまち消えていき、黒い木が普通の木へと変化していった。
「やったあ!これでお友達になれるのかな?」
「そうだな……魔力は消えずに、闇の力だけが消されたようだから、サラの望む通りになるのかもしれないな。……それにしても、この魔力、どこかで感じたことがあるような……」
「あ、ラトンおねえちゃんもそう思ったの?これって、植物を動かす時に使う魔力だよね?」
「そうだな、それも人間が持つ魔力に似ていながらも、特殊な力が混ざっている……この独特な魔力は……」
「……き、きぃぃぃ……」
「動いた!動く木さん、友達になろう!!」
「きぃ、きぃきぃ……」
サラが差しのべた手を、動く木は枝の先で優しく触れる。
「やったあ……!!」
サラは喜び、動く木に抱き付く。

……その光景を、1人の少女が見ていた。

「あの魔力は……そうだ、サニーだ!新緑族の力の源である魔力が入っている!」
「なるほど!サニーおねえちゃんのだったんだね!」
ラトンたちの言葉を聞いて、少女は待ってましたと言わんばかりに目の前に現れる!
「なのなのー!!この木、サニーが動かしたなのー!!かわいいでしょなの!とっても優しい子で、世界を歩き回りたいのが夢だって言ってたなの、だから頑張って叶えたなの!」
「それで、木が動き出すなんてことがあったのか……。しかし、先ほどまで闇の力に覆われていたぞ、何があったんだ?」
「それは……クラウディのせいなの!あいつ、『ドミキの代わりを果たすだぜー!!』なんて言って張り切っちゃってるなの。こんなに優しい子に闇の力を入れるなんて恐ろしいやつなの……」
「そういえば、お前には別の闇の存在の敵がいるんだったな……」
「そうなの。だから今クラウディを探しててこらしめようと思っているなの。そしたら一緒に行動していたイルアとはぐれちゃって……なの」
「えっ?この森にイルアがいるのか……?」
「うん、いるなの!ちょっとヒトデにお願いして、こっちの時代まで連れてきたなのー」
「だが……珍しいな。サニーと言えば植物というイメージだが、同じ年頃の男の子と一緒に行動するなんて……」
「その言葉、そっくりラトンに返すーなの!早く結婚しちゃえなの!」
「なっ……!!う、うるさいっ!!」
「サニーおねえちゃん、大丈夫だよ。ラトンおねえちゃんならその内アレクおにいちゃんのこと蹴ったりしながらべったりになるから!」
「ラン!?そんな未来、私は無いと思って……いるからな!!」
「ふふふー♪分からないよー?」
照れを隠すことができずに焦るラトンと、それを見て笑みを浮かべるランに、からかい気味なサニー。
そして、よく分からないけれど楽しいことだと判断して一緒に笑うサラ。
動く木もゆらゆらと体を動かし、笑っている。
皆の緊張がほぐれたところで、ラトンは話を戻す。
「……それで、本当はサニー1人でなんとかしたいところだったけどなの……、この子を動かすために魔力を使っちゃって、今は手蔓もまともにできない状態で戦えないなの……。だからおねがいなの!一緒にクラウディをやっつけてなの!!」
「ああ、私たちも協力する」
「クラウディおねえちゃんに会うの、ひさしぶりだなぁ……!」
「友達になりたいな……!」
「皆、ありがとうなの!でも、たぶんクラウディとは友達になれないなの」
「えー、そんなのわからないよ!」
「少なくとも、私とクラウディは無理なの!植物を敵に回す奴とは戦う運命にあるなの!」
「どうして戦わないといけないの?」
「植物たちが消える危険があるからそれを護らなくちゃいけないなの!」
「そんなの、実際にするかどうかわからないよ?」
「あーもうなの……!!」
今度は終わらない質問にサニーが焦りだす。
子どもの意見と頑固者の意見がぶつかり、話が進まない……。
ラトンたちは、まあまあと話を止め、ひとまずクラウディとイルア探しの冒険へ出発する。

「もぐもぐ……なの。やっぱりラトンの料理はおいしいなの!」
「うぐうぐ……。ラトンおねえちゃんの料理ってすごくおいしいよね!」
「……っ。行儀が悪いとはいえ、探さないと森が危ない。少なくとも口に食べ物が入っている時は喋るようなことはするなよ?」
「もぐも……はーい!なのもぐなの……」
「…………」
4人はラトンが作った料理を歩きながら食べ、クラウディとイルアを探している。
そして動く木も、ラトンたちと同行している。
「……!魔力を感じる……誰かいるぞ!」
ラトンは誰かの魔力を感じ取り、その場で止まる。
静かに集中し、魔力の場所を突き止める。
「あの方角に2人分の気配を感じる!行くぞ、皆!」
「なの!」
「はい!」
「うん!」
4人と1本は人の気配がする方へ走る。
この静かな森の中ならおそらく……クラウディとイルアのどちらかは少なくともいるだろう。

……木々を何本か抜かしていった先には、銀髪の少年と黒髪の少女が向かいあっていた。
「イルアなの!そして、クラウディなの……!!」
「サニー……!今のクラウディは強い、気を付けろ……!」
「水が得意なイルアが押されている、なの!?」
イルアは大ケガはしていないものの、クラウディの炎によって弱った様子だ。
一方でクラウディは余裕の笑みを浮かべ、サニーたちを見る。
「今日のオレは一味違うだぜ!本気を出したオレの力を思い知れだぜー!!」
「だったら、サニーも……!サニーも本気だす……な……の……」
「サニー!」
サニーはふらつき、倒れそうになるところをラトンに支えられる。
今のサニーには、植物を動かすための力がほとんど残っていないため、自身の具合も悪くなってきているのだ。
「ふははははーっ!植物ごときに大きな力を使ったお前は馬鹿者だぜ!!それに比べてオレの今の力!お前たちがまとめてかかってきても倒れない自信はたっぷりあるだぜー!!」
「うぅ……やっぱり腹が立つなの……!」
「きぃきぃぃぃ……!!」
「あっ!サニーが動かした木が……!」
「なっ!?あいつから闇が消えてるだぜ!?こ、この!だぜ!!」
動く木はクラウディに突進をする。
しかし、クラウディはすかさず反撃に出て、闇の力を動く木に注ぐ。
「きぃぃぃぃぃぃぃきいぃぃぃ!!!!」
「ああっ!!やめろなのー!!」
動く木はもがき、そのもがきで黒い炎が燃え広がっていく。
「きぃぃぃぎぎぎぎぃぃぃぃぎぃぃぃっぎぎぃいぃぃっ!!!」
動く木は黒く染まり、再び闇の力に操られてしまった。
「さあ、今度は増し増しの増しで入れといたから簡単には負けないだぜ!!」
「……ぎぎぃぃ……」
「……確かに、先ほどの闇の力で暴走してた時とは格が違う……!皆、気を付けろ!」
「う、うん!」
「本当、闇の力がいっぱい……きをつけなきゃ」
「いつもならこんな闇、どうにかなってたけどなの、気を付けるに越したことはないなの!」
「ここは、皆で協力して倒すしかなさそうだ……!」
「……いくぞ、皆!!」
ラトンが合図を出し、戦えないサラ以外の全員が動き出す。

「フリーズショット!!」
「ウェーブテイル!!」
ラトンとイルアがクラウディに向けて挟み撃ちで技を繰り出す。
「業火の鎚!」
「ぎぃぎいぃい!!」
すかさずクラウディも反撃し、闇の動く木も反応してクラウディを守ろうとする。
2人の攻撃は見事に相殺され、クラウディを傷つけることはできなかった。
「くっ……、なかなか隙ができないな」
「みんなー!ここはわたしにまかせてー!!」
「あっ、ラン!!」
ランは小さな翼で飛び立ち、上空から攻撃を仕掛ける。
「いっけー、ヒートミサイル!!」
ランのヒートミサイルは闇の動く木に命中し、動きを封じた。
「今のうちに、光の技を!!」
「光の技なら協力すればサニーも少し使えるなの!!」
「……よし、エクストラアローに皆の力を入れて放つ!皆、力を貸してくれ!」
ラトンの言葉に皆が集まり、力を分け与える。
サニーは体力のギリギリまで使い、サラは応援の気持ちを込める。
ランは強力な力を注ぎ、イルアもありったけの力を加えていく。
「さ、させるかだぜー!!……破滅烈火!!」
「ぎぃっ!!!」
クラウディと闇の動く木もその場で立ち尽くす訳が無く、こちらも大技で攻撃しようとする。
「……いくぞ!!エクストラアロー++++(プラスフォー)!!」
5人の力で放つエクストラアローはすさまじい勢いで進み、
相手の技を飲み込んでクラウディと闇の動く木に直撃する。
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!な、なんだこの光はだぜ……!?」
「ぎぃぃぃぃぃ!!!!きぃぃいぃ……!」
力を合わせた光は、動く木の闇を再び浄化させる。
「なっ……!あいつの闇が一瞬で消えただぜ!?……ま、まずい……だ……ぜ……」
動く木が元に戻っていくのを見たクラウディは、自身の感覚が無くなっていくのを感じる。
クラウディ自身は闇……このままだと、消えてしまう。
「く……やし……が、にげ……だ、だぜ……」
クラウディは必至に逃げることだけを考え、もがくようにして逃げ出す。

……これで、この森の戦いは終わった。
ラトンたちは勝つことができたのだ。
「皆の協力のおかげで……勝てた……」
「うーん、やっぱりにんずうがおおいほうが勝っちゃうよね!」
「動く木さんも元に戻って、良かった良かった!」
「……サニー!大丈夫か!?」
「……な、なの……なのぅ……」
「サニー……!」
サニーの様子がおかしい。
先ほどの協力で、ありったけの力をラトンに差し出したせいで身動きが取れなくなってしまった。
「ラトンおねえちゃん、これ……まずいよ!ちからが……よわくなってる!!」
「ああ……。このままだと、サニーは……植物に関する力が使えなくなってしまう」
「……!!」
ラトンの言葉に一番に驚いたのはサニーだ。
生まれてから今までずっと使ってきたこの力が……失われそうになるとは、思いもしなかったからだ。
「しかし……私にはどうすればいいのか分からない。新緑族の力は魔力とはいえ、私たちの持つ魔力とは性質が違う……」
「ラトン……。俺に案がある。それに賭けてくれないか」
イルアが真剣な表情で声をかける。成功するかどうかは、試してみないと分からない。
「ああ……。他に案が思いつかない、イルアに任せる……」
「ありがとう、ラトン。……案はこうだ」
イルアはやや早口になりつつも丁寧に言葉を伝える。
「時空のかけらを粉にして、その粉に皆の力を入れてサニーに飲ませる……。ここで重要なのは、『動く木』にも力を入れてもらうことだ。動く木が持つ魔力が彼女の持つ魔力に一番近いはず。だから、動く木にはほとんどの力を入れてもらうことになる」
「しかし、そうなると動く木は……」
「ああ。おそらくだが、体を動かすことはできなくなってしまうだろう。……動く木よ、この条件はのめるか?」
「きぃ!きぃきぃ!!」
動く木はイルアに近づき、枝を伸ばした。
……遠慮なく、力を差し出すようだ。
「……ありがとう。さあ、準備するぞ!」
イルアは専用の道具を取り出し、自身が持っている時空のかけらの1つを道具の上に置き、粉にしていく。
出来上がった粉にラトンの魔力伝達の力で皆の力を送り込んでいく。
「きぃ……きぃ……き……」
……間もなくして、木は動かなくなってしまった。木に魔力が無くなった証である。
「……力を入れてくれて、ありがとう。……さあ、サニーに飲ませないと」
イルアは粉を容器に入れ、サニーの口元へ持っていく。
「…………」
サニーは気が遠くなっていき、言葉もまともに発せなくなっていた。
「どうかこれを、飲んで……」
小さな口の中に、細かい粉が注がれていく。
石の粉は不思議なことに、喉へ吸い込まれていくように溶けて消えていく。
「……あとは、俺がまじないをするだけ……だな」
イルアはすうっと息を深く吸い込むと、両手をサニーの心臓へかざした。
「……エイマルタアシイドルモアリイトル、ヲアライカルチアノイイルラアンイホル、ニアーイニルサア、ヨイキルトア……」
イルアの両手には光が現れ、サニーの胸の中にずんずんと入っていく。
そして、光が全て胸の中に入っていくと同時に、サニーの意識はハッキリする。
「な……の?不思議なの……体が軽いなの!」
「やったあ!!サニーおねえちゃんがげんきになった!!」
「なのー……。こんなつもりじゃなかったけどなの、ま、いっかなの!」
「すまない、サニーにとって大切な木の魔力を奪うことになってしまって……」
「……大丈夫なの、あの子は動かなくても元気そうにしてるなの!……え?どうしたなの?」
サニーは動かなくなった木に耳を傾け、言葉を聞く。
「……え!?伐って持ち歩けなの!?それで……いいなの?……わ、分かったなの。本当、優しい子なの……」
「持ち歩く……?それなら、俺にいい案がある。その木を杖にしたらどうだ?サニーも持ち歩ける上に木もいつでも協力することができる」
「それ、いい考えなの!!サニー、今日から杖使いになるなのー!!!」
サニーは目を輝かせ、イルアも嬉しそうな顔をする。
ともかく、無事に解決して一件落着……。



……その頃、逃げ出したクラウディは逃げ出した直後に意識が遠のいており、ようやく気が付く。
「……だぜ!?なんか疲れが吹っ飛んでるだぜ!?……サニーはどうしてるだぜ?」
こっそりと逃げた道を辿っていき、サニーたちの様子をうかがう。
「今日のことで、イルアが良いヤツだって改めて分かったなの!イルア、万能なの!」
「ははは……照れるな、サニー……」
「きょうはサニーおねえちゃん、うれしそうだねー!」
「えへへー、嬉しいなの!……サニーたちもこんな仲良しなんだから、ラトンも早くもっとアイツと仲良くなれなの!」
「そっ、そこでどうして私の話を混ぜてくる!?」

「……サニーが元気になってる、だぜ……?まさか……」
クラウディは考えてみた。自分はサニーの分身のようなものである、と。
サニーの植物の力は、クラウディにも入っている。形作られている。
……つまり、今回クラウディが消えそうになったのはエクストラアローのせいだけではなく……
「……!!アイツ、自分ごとオレを消そうとしてだぜ!?やっぱり悪魔……だぜ」
真っ黒なクラウディが言うほどでもないが、いつでもサニーは植物のためなら尽くすぐらいの<悪魔>のような存在であった。




ということで、以上です!お疲れ様!長かったでしょう!!
今回は時空日記初!たぶん初!イルアとサニーのカップル入りでした!
いやあ、あの2人、どうして仲良くなったんでしょう。謎です。
2人が仲良くなっている都合上、スエラスとヒトデはいません。
というかもう彼女たちの旅が終わった後の話です。
(話の途中でヒトデが出てきたのは協力してもらっただけに過ぎず、一緒に行動はしていない)
なので、スエラスもヒトデもお相手さんがいる場所へ……。
……おおっと、お相手さんの話をするのはまだ早かった。まだ設定が固まりきってないので公表はもうちょい先です!
思えば、皆幸せになったんだよなぁ、3月28日組……。
それでは、次回またこの企画でお会いできたら……いいですね!